改正短時間・有期雇用労働法の読み解き
Ⅰ.改正短時間・有期雇用労働法の概要
1.厚生労働省の「パート・有期労働ポータルサイト」の活用
法改正により、同一企業内において、正社員(無期雇用フルタイム労働者)とパートタイム労働者・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止されます。裁判の際に判断基準となる「均衡待遇規定」「均等待遇規定」を法律に整備されました。
このため各企業では不合理な待遇差をなくすための取り組みが求められますが、その取組を図るための各種マニュアルや法律の解説資料が「パート・有期労働ポータルサイト」(以下のURL参照)に用意されています。
また、非正規雇用労働者の正社員化や処遇改善の取組を実施した事業主に対してキャリアアップ助成金が支給されますが、手続き方法の資料等もリンクされています。
「パート・有期労働ポータルサイト」URL: https://part-tanjikan.mhlw.go.jp/
以下では、改正法の中で留意すべき点を解説します。
2.労働契約法第20条の移行
労働契約法20条(有期契約労働者の不合理な条件の禁止)は、令和2年4月1日に改正施行(中小企業は令和3年4月1日から適用)された矩時間・有期雇用労働法(旧短時間労働法)第8条に移ります。これは、有期雇用労働者にも旧短時間労働法の雇用管理に関する以下の規制が適用されるということになります。
定年後再雇用者等の有期雇用労働者をフルタイムで雇用している場合には、新たに以下の規制が適用されるため留意してください。
① 新たに雇い入れ時の労働条件明示義務(第6条)
② 差別的取扱いの禁止(第9条)
③ 職務の内容に関連する賃金について均衡決定の努力義務(第10条)
④ 教育訓練の実施及び努力義務(第11条)
⑤ 福利厚生施設の利用義務(第12条)
⑥ 通常の労働者への転換措置義務(第13条)
⑦ 事業主が講ずる措置の内容等の説明義務(第14条)
⑧ 相談のための体制の整備(第16条)
⑨ 厚生労働大臣の報告の徴収並びに助言、指導及び勧告等(第18条)
⑩ 事業主等に対する国の援助等(第19条以下)
⑪ 紛争の解決(第22条以下)
3.改正概要
改正された矩時間・有期雇用労働法の主な改正部分(第8条、第9条、第10条及び第14条のみ抜粋)は、旧規定に比べ、具体的な対応を求める表現が多くなっています。
働き方改革関連法新旧対照表(P72~82)URL: https://www.mhlw.go.jp/content/000467466.pdf
(1)第8条(不合理な待遇の禁止)
前段では従来の単なる「待遇」という規定が「基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて」とされました。後段では「…不合理と認められるものであってはならない。」をさらに具体的に「…当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならない。」とされました。
また、9条と共通ですが、通常の労働者の待遇との比較が従来の「事業所単位」から「事業主単位」に変更されました。同一事業所に待遇を比較する通常の労働者がいないときは同一事業主のすべての事業所に比較対象範囲を広げることになります。
なお、「不合理と認められる」という表現は従来通りですが、「合理的」に対する法令の許容範囲を示すもので、待遇の実情その他を総合的に勘案して不合理性を判断することになりますので、第9条の「…差別的取扱いをしてはならない。」とは位置づけが異なります。
(2)第9条(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)
「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」と「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」の規定は有期雇用を追加しただけで内容が改正によって変わるわけではありませんが、「職務の内容が通常の労働者と同一である短時間・有期雇用労働者」である「職務内容同一短時間・有期雇用労働者」については、第11条第1項(教育訓練)に限定した実施義務を課しています。
一方、「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者」は「当該事業主との雇用関係が終了するまでの全期間において、その職務の内容及び配置が当該通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲で変更されることが見込まれるもの」とされ、「基本給、賞与その他の待遇のそれぞれ」について差別的取り扱いを禁止しています。
(3)第10条(賃金)
「短時間・有期雇用労働者」を改正前と同様に「通常の労働者との均衡を考慮しつつ、その雇用する短時間・有期雇用労働者(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者を除く。)」と定義し、賃金について第8条の職務の内容に密接に関連して支払われるものとして、「職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を勘案」して決定することを求めています。
カッコ書きで「通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者を除く。」としているのは、当該者は第9条の差別的取扱禁止対象者であるためです。また、「その他の就業の実態」には「勤続年数」なども含まれます。
改正により「退職手当」が除外(施行規則第3条)されていることから、「退職手当」も職務の内容に密接に関連して支払われるものとして不合理な待遇を禁止する第8条の適用を受けることになります。
働き方改革関連法省令(P32~33)URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000473040.pdf
(4)第14条(事業主が講ずる措置の内容等の説明)
改正により第8条(不合理な待遇の禁止)を含めて措置の内容について雇い入れ時の説明義務が課されましたので、新たに「不合理な待遇ではない」と説明できるようにする必要があります。
また、短時間・有期雇用労働者からの求めによる説明義務に新たに短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇(いわゆる「待遇差」)の相違の内容及び理由が追加され、その説明には第8条(不合理な待遇の禁止)が含まれることになりました。
労基法第15条第1項に規定する事項及び法第6条第1項の特定事項は、文書等の交付等による明示が義務付けられていることから、本条第1項による説明義務の対象とはされていませんが、法10条(賃金)及び第11条(教育訓練)第2項により努力義務が課されているものは説明義務の対象とされます。
(5)均衡待遇規定と均等待遇規定とは
法第8条は、全ての短時間・有期雇用労働者の全ての待遇(労働時間及び労働契約の期間を除く。)を対象に、その待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との問で、「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」及び「その他の事情」のうち、待遇のそれぞれの性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないとするいわゆる均衡待遇規定を設けています。
また、法第9条において、通常の労働者と「職務の内容」並びに「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同一である短時間・有期雇用労働者について、その全ての待遇(労働時間及び労働契約の期間を除く。)を対象に、短時間・有期雇用労働者であることを理由として差別的取扱いをしてはならないとする、いわゆる均等待遇規定を設けています。
短時間・有期雇用労働者についての、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保に当たっては、短時間・有期雇用労働者の就業の実態等を考慮して措置を講じていくこととなりますが、「就業の実態」を表す要素のうちから「職務の内容」及び「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」の2つを、法第8条において通常の労働者との待遇の相違の不合理性を判断する際の考慮要素として例示するとともに、第9条等において適用要件としています。
「職務の内容」及び「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」が、第8条での考慮要素とする一方、第9条では適用要件とされたことにより、 「職務の内容」及び「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」の要件を充たした場合には自動的に差別的取扱い禁止の効果が生じます。
(6)第8条及び第9条に定める「その他の事情」
施行通達によると第8条は『職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲に関連する事情に限定されるものではないこと。具体例としては、職務の成果、能力、経験、合理的な労使の慣行、事業主と労働組合との間の交渉といった労使交渉の経緯などの諸事情が「その他の事情」として想定されるものであり、考慮すべきその他の事情があるときに考慮すべきものであること。また、「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(厚生労働省告示第430号)」(以下「ガイドライン」という。)において「有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることは、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理と認められるか否かを判断するに当たり、短時間・有期雇用労働法第8条のその他の事情として考慮される事情に当たりうる。定年に達した後に有期雇用労働者として継続雇用する場合の待遇について、様々な事情が総合的に考慮されて、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理と認められるか否かが判断されるものと考えられる。したがって、当該有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることのみをもって、直ちに通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理ではないと認められるものではない」とされていることに留意すること。』、また『「その他の事情」に労使交渉の経緯が含まれると解されることを考えると、このように待遇の相違の内容等について十分な説明をしなかったと認められる場合には、その事実も「その他の事情」に含まれ、不合理性を基礎付ける事情として考慮されうると考えられるものであること。』とされ、第9条は『例えば人事規程等により明文化されたものや当該企業において、当該事業所以外に複数事業所がある場合の他の事業所における慣行等が含まれるものであること。なお、ここでいう「その他の事情」とは、職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の仕組み、運用等)を判断するに当たって、当該事業所における「慣行」と同じと考えられるべきものを指すものであり、短時間・有期雇用労働者と通常の労働者の待遇の相違の不合理性を判断する考慮要素としての法第8条の「その他の事情」とは異なるものであること。』とされます。
ガイドラインURL: https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000469932.pdf
4.「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について(基発0130第1号 職発0130第6号 雇均発0130第1号 開発0130第1号 平成31年1月30日)」(以下「施行通達」という。)
改正に係る主な条項と短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等の措置に係る重要な条項の施行通達は以下のとおりです。
施行通達URL:https://www.mhlw.go.jp/content/000475500.pdf
施行通達の全文が78ページに及ぶため、大多数の短時間・有期雇用労働者に適用される根幹をなす条項と考えられる第8条(不合理な待遇の禁止)と第10条(賃金)に係る均衡待遇及び第14条(事業主が講ずる措置の内容等の説明)に係る説明義務について定義と手順を中心に抜粋して掲載します。特に重要な個所は下線で示しました。
(1)第2条(定義)
ア.「短時間労働者」の一週間の所定労働時間の比較対象が同一の「事業所」に雇用される通常の労働者から同一の「事業主」に雇用される通常の労働者に改正されました。
「事業主」を単位として比較することとしているのは、法第8条に統合された整備法による改正前の労働契約法(平成19年法律第128号)第20条において、事業主を単位として、期間の定めのある労働契約を締結している労働者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者との間の不合理と認められる労働条件の相違を禁止していたこと、及び同一の事業所には待遇を比較すべき通常の労働者が存在しない場合があるなど、事業所を単位とすると、十分に労働者の保護を図ることができない場合が生じていると考えられることによるものであること。
イ.「通常の労働者」とは、いわゆる正規型の労働者及び事業主と期間の定めのない労働契約を締結しているフルタイム労働者(以下「無期雇用フルタイム労働者」という。)をいうものです。また、法が業務の種類ごとに短時間労働者を定義していることから、「通常」の判断についても業務の種類ごとに行うものであること。同種の業務の範囲を判断するに当たっては、『厚生労働省編職業分類』の細分類の区分等を参考にし、個々の実態に即して判断すること。
ウ.いわゆる「正規型の労働者」とは、労働契約の期間の定めがないことを前提として、社会通念に従い、当該労働者の雇用形態、賃金体系等(例えば、長期雇用を前提とした待遇を受けるものであるか、賃金の主たる部分の支給形態、賞与、退職金、定期的な昇給又は昇格の有無)を総合的に勘案して判断するものであること。また、「無期雇用フルタイム労働者」は、その業務に従事する無期雇用労働者(事業主と期間の定めのない労働契約を締結している労働者をいう。以下同じ。)のうち、1週間の所定労働時間が最長の労働者のことをいいます。このため、いわゆる「正規型の労働者」の全部又は一部が、「無期雇用フルタイム労働者」にも該当する場合があること。
(2)第2条の2(基本的理念)
本条は、短時間・有期雇用労働者としての就業が、柔軟な就業のあり方という特長を保ちつつ、労働者の意欲及び能力が有効に発揮できるものとなるべきであるとの考え方のもと、短時間・有期雇用労働者及び短時間・有期雇用労働者になろうとする者が、生活との調和を保ちつつその意欲や能力に応じて就業することができる機会が確保されるべきことを基本的理念として明らかにしたものであること。あわせて、短時間・有期雇用労働者が充実した職業生活を送れるようにすることが、社会の活力を維持し発展させていくための基礎となるとともに、短時間・有期雇用労働者の福祉の増進を図る上でも不可欠であることに鑑み、その職業生活の充実が図られるような社会を目指すべきであることから、その旨についても基本的理念として明らかにしたものであること。
本条の基本的理念は、次条の事業主等の責務やこれらを踏まえた法第3章第1節の各種措置等とあいまって、短時間・有期雇用労働者という就業のあり方を選択しても納得が得られる待遇が受けられ、多様な働き方を自由に選択できる社会の実現を図るものであること。
(3)第3条(事業主等の責務)
第1条に定める法の目的である「通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ることを通じて短時間・有期雇用労働者がその有する能力を有効に発揮することができる」ことを実現するために、短時間・有期雇用労働者の適正な労働条件の確保、教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善及び通常の労働者への転換の推進(以下「雇用管理の改善等」という。)について、事業主が適切に措置を講じていく必要があることを明らかにするため、法第3条において、短時間・有期雇用労働者について、その就業の実態等を考慮して雇用管理の改善等に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図り、当該短時間・有期雇用労働者がその有する能力を有効に発揮することができるように努めるものとすることを事業主の責務としたものであること。
ア.法第3条において考慮することとされている「その就業の実態等」の具体的な内容としては、短時間・有期雇用労働者の「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」、経験、能力、成果、意欲等をいうものであること。
イ.「雇用管理の改善等に関する措置等」とは、法第3章第1節に規定する「雇用管理の改善等に関する措置」(法第6条~第18条)と、法第22条に規定する苦情の自主的解決に努める措置をいうものであること。
ウ.通常の労働者と短時間・有期雇用労働者の「均衡のとれた待遇」は、就業の実態に応じたものとなるが、その就業の実態が同じ場合には、「均等な待遇」を意味する。
他方、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間で、就業の実態が異なる場合、その「均衡のとれた待遇」とはどのようなものであるかについては、一義的に決まりにくい上、待遇と言ってもその種類(賃金、教育訓練、福利厚生施設等)や性質・目的(職務の内容との関連性等)は一様ではない。
そのような中で、事業主が雇用管理の改善等に関する措置等を講ずることにより通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図っていくため、法第3章第1節においては、講ずべき措置を定めたものであること。
(ア) 法第8条において、全ての短時間・有期雇用労働者の全ての待遇(労働時間及び労働契約の期間を除く。)を対象に、その待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間で、「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲(有無を含む。)」及び「その他の事情」のうち、待遇のそれぞれの性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないとするいわゆる均衡待遇規定を設けている。
(イ)法第9条において、通常の労働者と職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲が同一である短時間・有期雇用労働者について、その全ての待遇(労働時間及び労働契約の期間を除く。)を対象に、短時間・有期雇用労働者であることを理由として差別的取扱いをしてはならないとするいわゆる均等待遇規定を設けている。
(ウ)法第10条から第12条までにおいては、短時間・有期雇用労働者の就業の実態を踏まえつつ、賃金、教育訓練及び福利厚生施設の3つについて、それぞれ講ずべき措置を明らかにしているものであること。法第11条第1項は、職務の内容が通常の労働者と同一であるという就業の実態や、職務との関連性が高い待遇であるといった事情を踏まえて具体的な措置の内容を明らかにしたものであり、法第12条は、全ての通常の労働者との関係で普遍的に講ずべき措置の内容について明らかにしたものであること。他方、法第10条及び第11条第2項については、就業の実態が多様な短時間・有期雇用労働者全体にかかる措置として、具体的に勘案すべき就業の実態の内容(職務の内容、職務の成果、意欲、能力、経験等)を明記したものであること。これらの勘案すべき就業の実態の内容を明記しているのは、これらの要素が通常の労働者の待遇の決定に当たって考慮される傾向にあるのとは対照的に、短時間・有期雇用労働者について十分に考慮されている現状にあるとは言い難く、短時間・有期雇用労働者についても、これらに基づく待遇の決定を進めていくことが公正であると考えられることによること。
(エ)「通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等」の「等」としては、
① 短時間・有期雇用労働者であることに起因して、待遇に係る透明性・納得性が欠如していることを解消すること(適正な労働条件の確保に関する措置及び事業主の説明責任により達成される)
② 通常の労働者として就業することを希望する者について、その就業の可能性を全ての短時間・有期雇用労働者に与えること(通常の労働者への転換の推進に関する措置により達成される)
等が含まれるものであること。
エ.「均衡のとれた待遇の確保」における定義
(ア)「職務の内容」とは、「業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」をいい、労働者の就業の実態を表す要素のうちの最も重要なものであること。
「業務」とは、職業上継続して行う仕事であること。
「責任の程度」とは、業務に伴って行使するものとして付与されている権限の範囲・程度等をいうこと。具体的には、授権されている権限の範囲(単独で契約締結可能な金額の範囲、管理する部下の数、決裁権限の範囲等)、業務の成果について求められる役割、トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度、ノルマ等の成果への期待の程度等を指す。責任は、外形的にはとらえにくい概念であるが、実際に判断する際には、責任の違いを表象的に表す業務を特定して比較することが有効であること。
また、責任の程度を比較する際には、所定外労働も考慮すべき要素の一つであるが、これについては、例えば、通常の労働者には所定外労働を命ずる可能性があり、短時間・有期雇用労働者にはない、といった形式的な判断ではなく、実態として業務に伴う所定外労働が必要となっているかどうか等を見て、判断することとなること。例えば、トラブル発生時、臨時・緊急時の対応として、また、納期までに製品を完成させるなど成果を達成するために所定外労働が求められるのかどうかを実態として判断すること。なお、ワークライフバランスの観点からは、基本的に所定外労働のない働き方が望ましく、働き方の見直しにより通常の労働者も含めてそのような働き方が広まれば、待遇の決定要因として所定外労働の実態が考慮されること自体が少なくなっていくものと考えられるものであること。
(イ)「職務の内容の同一性」については、具体的には以下の手順で比較していくこととなるが、「職務の内容が同一である」とは、個々の作業まで完全に一致していることを求めるものではなく、それぞれの労働者の職務の内容が「実質的に同一」であることを意味するものであること。
したがって、具体的には、「業務の内容」が「実質的に同一」であるかどうかを判断し、次いで「責任の程度」が「著しく異なって」いないかを判断するものであること。
まず、第一に、業務の内容が「実質的に同一」であることの判断に先立って、「業務の種類」が同一であるかどうかをチェックする。これは、『厚生労働省編職業分類』の細分類を目安として比較し、この時点で異なっていれば、「職務内容が同一でない」と判断することとなること。
他方、業務の種類が同一であると判断された場合には、次に、比較対象となる通常の労働者及び短時間・有期雇用労働者の職務を業務分担表、職務記述書等により個々の業務に分割し、その中から「中核的業務」と言えるものをそれぞれ抽出すること。
「中核的業務」とは、ある労働者に与えられた職務に伴う個々の業務のうち、当該職務を代表する中核的なものを指し、以下の基準に従って総合的に判断すること。
① 与えられた職務に本質的又は不可欠な要素である業務
② その成果が事業に対して大きな影響を与える業務
③ 労働者本人の職務全体に占める時間的割合・頻度が大きい業務
通常の労働者と短時間・有期雇用労働者について、抽出した「中核的業務」を比較し、同じであれば、業務の内容は「実質的に同一」と判断し、明らかに異なっていれば、業務の内容は「異なる」と判断することとなること。なお、抽出した「中核的業務」が一見すると異なっている場合には、当該業務に必要とされる知識や技能の水準等も含めて比較した上で、「実質的に同一」と言えるかどうかを判断するものであること。
ここまで比較した上で業務の内容が「実質的に同一である」と判断された場合には、最後に、両者の職務に伴う責任の程度が「著しく異なって」いないかどうかをチェックすること。そのチェックに当たっては、「責任の程度」の内容に当たる以下のような事項について比較を行うこと。
① 授権されている権限の範囲(単独で契約締結可能な金額の範囲、管理する部下の数、決裁権限の範囲等)
② 業務の成果について求められる役割
③ トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度
④ ノルマ等の成果への期待の程度
⑤ 上記の事項の補助的指標として所定外労働の有無及び頻度
この比較においては、例えば管理する部下の数が一人でも違えば、責任の程度が異なる、といった判断をするのではなく、責任の程度の差異が「著しい」といえるものであるかどうかを見るものであること。
なお、いずれも役職名等外見的なものだけで判断せず、実態を見て比較することが必要である。
以上の判断手順を経て、「業務の内容」及び「責任の程度」の双方について、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者とが同一であると判断された場合が、「職務の内容が同一である」こととなること。
オ.「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれる」ことについての定義
(ア)「職務の内容及び配置の変更の範囲」
現在の我が国の雇用システムにおいては、長期的な人材育成を前提として待遇に係る制度が構築されていることが多く、このような人材活用の仕組み、運用等に応じて待遇の違いが生じることも合理的であると考えられている。法は、このような実態を前提として、人材活用の仕組み、運用等を、均衡待遇を推進する上での考慮要素又は適用要件の一つとして位置付けている。人材活用の仕組み、運用等については、ある労働者が、ある事業主に雇用されている間にどのような職務経験を積むこととなっているかを見るものであり、転勤、昇進を含むいわゆる人事異動や本人の役割の変化等(以下「人事異動等」という。)の有無や範囲を総合判断するものであるが、これを法律上の考慮要素又は適用要件としては「職務の内容及び配置の変更の範囲」と規定したものであること。
「職務の内容の変更」と「配置の変更」は、現実にそれらが生じる際には重複が生じ得るものであること。つまり、「職務の内容の変更」とは、配置の変更によるものであるか、そうでなく業務命令によるものであるかを問わず、職務の内容が変更される場合を指すこと。他方、「配置の変更」とは、人事異動等によるポスト間の移動を指し、結果として職務の内容の変更を伴う場合もあれば、伴わない場合もあるものであること。 それらの変更の「範囲」とは、変更により経験する職務の内容又は配置の広がりを指すものであること。
(イ)「同一の範囲」
職務の内容及び配置の変更が「同一の範囲」であるとの判断に当たっては、一つ一つの職務の内容及び配置の変更の態様が同様であることを求めるものではなく、それらの変更が及び得ると予定されている範囲を画した上で、その同一性を判断するものであること。
例えば、ある事業所において、一部の部門に限っての人事異動等の可能性がある者と、全部門にわたっての人事異動等の可能性がある者とでは、「配置の変更の範囲」が異なることとなり、職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の仕組み、運用等)が同一であるとは言えないこと。
ただし、この同一性の判断は、「範囲」が完全に一致することまでを求めるものではなく、「実質的に同一」と考えられるかどうかという観点から判断すること。
(ウ)「変更されることが見込まれる」
職務の内容及び配置の変更の範囲(人材活用の仕組み、運用等)の同一性を判断することについては、将来にわたる可能性についても見るものであるため、変更が「見込まれる」と規定したものであること。ただし、この見込みについては、事業主の主観によるものではなく、文書や慣行によって確立されているものなど客観的な事情によって判断されるものであること。また、例えば、通常の労働者の集団は定期的に転勤等があることが予定されているが、ある職務に従事している特定の短時間・有期雇用労働者についてはこれまで転勤等がなかったという場合にも、そのような形式的な判断だけでなく、例えば、同じ職務に従事している他の短時間・有期雇用労働者の集団には転勤等があるといった「可能性」についての実態を考慮して具体的な見込みがあるかどうかで判断するものであること。
なお、育児又は家族介護などの家族的責任を有する労働者については、その事情を配慮した結果として、その労働者の人事異動等の有無や範囲が他と異なることがあるが、「職務の内容及び配置の変更の範囲」を比較するに当たって、そのような事情を考慮すること。考慮の仕方としては、例えば、通常の労働者や短時間・有期雇用労働者のうち、人事異動等があり得る人材活用の仕組み、運用等である者が、育児又は家族介護に関する一定の事由(短時間・有期雇用労働者についても通常の労働者と同じ範囲)で配慮がなされ、その配慮によって異なる取扱いを受けた場合、「職務の内容及び配置の変更の範囲」を比較するに際しては、その取扱いについては除いて比較することが考えられること。
カ.「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれる」ことの判断手順
(ア)「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれる」ことについては、法第9条の適用に当たって、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間で比較して同一性を検証しなければならないため、その判断のための手順が必要となる。法第9条に関しては、この検証は、(3)エ(イ)において示した手順により、職務の内容が同一であると判断された通常の労働者と短時間・有期雇用労働者について行うものであること。
まず、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者について、配置の変更に関して、転勤の有無が同じかどうかを比較すること。この時点で異なっていれば、「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれない」と判断することとなること。
次に、転勤が双方ともあると判断された場合には、全国転勤の可能性があるのか、エリア限定なのかといった転勤により移動が予定されている範囲を比較すること。この時点で異なっていれば、「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれない」と判断することとなること。
転勤が双方ともない場合、及び双方ともあってその範囲が「実質的に」同一であると判断された場合には、事業所内における職務の内容の変更の態様について比較すること。まずは、職務の内容の変更(事業所内における配置の変更の有無を問わない。)の有無を比較し、この時点で異なっていれば、「職務の内容及び配置が通常の労働者の職務の内容及び配置の変更の範囲と同一の範囲内で変更されることが見込まれない」と判断することとなること。同じであれば、職務の内容の変更により経験する可能性のある範囲も比較し、異同を判断するものであること。
また、法第8条における「職務の内容及び配置の変更の範囲」の異同についても、上記の観点から判断されるものであること。
(4)第8条(不合理な待遇の禁止)
ア.法第8条は、事業主が、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けることを禁止したものであること。
したがって、短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間で待遇の相違があれば直ちに不合理とされるものではなく、当該待遇の相違が法第8条に列挙されている要素のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められる事情を考慮して、不合理と認められるかどうかが判断されるものであること。
また、法第8条の不合理性の判断の対象となるのは、待遇の「相違」であり、この待遇の相違は、「短時間・有期雇用労働者であることに関連して生じた待遇の相違」であるが、法は短時間・有期雇用労働者について通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ろうとするものであり、法第8条の不合理性の判断の対象となる待遇の相違は、「短時間・有期雇用労働者であることに関連して生じた」待遇の相違であることが自明であることから、その旨が条文上は明記されていないことに留意すること。
法第8条は、事業主が、短時間・有期雇用労働者と同一の事業所に雇用される通常の労働者や職務の内容が同一の通常の労働者との間だけでなく、その雇用する全ての通常の労働者との間で、不合理と認められる待遇の相違を設けることを禁止したものであること。
イ.「その他の事情」については、職務の内容並びに職務の内容及び配置の変更の範囲に関連する事情に限定されるものではないこと。
具体例としては、職務の成果、能力、経験、合理的な労使の慣行、事業主と労働組合との間の交渉といった労使交渉の経緯などの諸事情が「その他の事情」として想定されるものであり、考慮すべきその他の事情があるときに考慮すべきものであること。
また、ガイドラインにおいて「有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることは、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理と認められるか否かを判断するに当たり、短時間・有期雇用労働法第8条のその他の事情として考慮される事情に当たりうる。定年に達した後に有期雇用労働者として継続雇用する場合の待遇について、様々な事情が総合的に考慮されて、通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理と認められるか否かが判断されるものと考えられる。したがって、当該有期雇用労働者が定年に達した後に継続雇用された者であることのみをもって、直ちに通常の労働者と当該有期雇用労働者との間の待遇の相違が不合理ではないと認められるものではない」とされていることに留意すること。
さらに、法第14条第2項に基づく待遇の相違の内容及びその理由に関する説明については労使交渉の前提となりうるものであり、事業主が十分な説明をせず、その後の労使交渉においても十分な話し合いがなされず、労使間で紛争となる場合があると考えられる。「その他の事情」に労使交渉の経緯が含まれると解されることを考えると、このように待遇の相違の内容等について十分な説明をしなかったと認められる場合には、その事実も「その他の事情」に含まれ、不合理性を基礎付ける事情として考慮されうると考えられるものであること。
ウ.「待遇」には、基本的に、全ての賃金、教育訓練、福利厚生施設、休憩、休日、休暇、安全衛生、災害補償、解雇等の全ての待遇が含まれること。
一方、短時間・有期雇用労働者を定義付けるものである労働時間及び労働契約の期間については、ここにいう「待遇」に含まれないこと。
なお、事業主ではなく、労使が運営する共済会等が実施しているものは、対象とならないものであること。
エ.法第8条は、整備法による改正前の労働契約法第20条を統合しつつ、その明確化を図った規定であること。法第8条については、私法上の効力を有する規定であり、短時間・有期雇用労働者に係る労働契約のうち、同条に違反する待遇の相違を設ける部分は無効となり、故意・過失による権利侵害、すなわち不法行為として損害賠償が認められ得ると解されるものであること。また、短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との待遇の相違が法第8条に違反する場合であっても、同条の効力により、当該短時間・有期雇用労働者の待遇が比較の対象である通常の労働者の待遇と同一のものとなるものではないと解されるものであること。ただし、個々の事案に応じて、就業規則の合理的な解釈により、通常の労働者の待遇と同一の待遇が認められる場合もあり得ると考えられるものであること。
オ.法第8条に基づき民事訴訟が提起された場合の裁判上の主張立証については、待遇の相違が不合理であるとの評価を基礎付ける事実については短時間・有期雇用労働者が、当該相違が不合理であるとの評価を妨げる事実については事業主が主張立証責任を負うものと解され、同条の司法上の判断は、短時間・有期雇用労働者及び事業主双方が主張立証を尽くした結果が総体としてなされるものであり、立証の負担が短時間・有期雇用労働者側に一方的に負わされることにはならないと解されるものであること。
カ.ガイドラインは、法第8条及び第9条等に定める事項に関し、雇用形態又は就業形態に関わらない公正な待遇を確保し、我が国が目指す同一労働同一賃金の実現に向けて定めるものであること。我が国が目指す同一労働同一賃金は、同一の事業主に雇用される通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間の不合理と認められる待遇の相違及び差別的取扱いの解消等を目指すものであること。
また、ガイドラインは、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間に待遇の相違が存在する場合に、いかなる待遇の相違が不合理と認められるものであり、いかなる待遇の相違が不合理と認められるものでないのか等の原則となる考え方及び具体例を示したものであること。事業主が、この原則となる考え方等に反した場合、当該待遇の相違が不合理と認められる等の可能性があること。なお、ガイドラインに原則となる考え方が示されていない退職手当、住宅手当、家族手当等の待遇や、具体例に該当しない場合についても、不合理と認められる待遇の相違の解消等が求められること。このため、各事業主において、労使により、個別具体の事情に応じて待遇の体系について議論していくことが望まれること。 なお、ガイドライン第3の1(注)1において、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間に賃金の決定基準・ルールの相違がある場合の考え方を記載しており、この考え方は基本給に限られたものではないが、賃金の決定基準・ルールが異なるのは、基本的に、基本給に関する場合が多いと考えられることから、ガイドライン第3の1において規定しているものであること。
(5)第10条(賃金)
ア.法第10条については、法第9条の対象となる短時間・有期雇用労働者以外の全ての短時間・有期雇用労働者が対象となるものである。これは、短時間・有期雇用労働者が勤続年数を重ねてもほとんど賃金に反映されないことや昇給が最低賃金の改定に応じて決定されるなど、働きや貢献とは関係のない要素で賃金が決定されることが多いことから、職務の内容、成果等に応じて短時間・有期雇用労働者の賃金を決定するよう努めることとしたものであること。
ただし、通勤手当、家族手当、住宅手当、別居手当、子女教育手当その他名称の如何を問わず支払われる賃金(いずれも職務の内容に密接に関連して支払われるものを除く。)については、本条の対象外となるものであること(則第3条)。
なお、手当について職務の内容に密接に関連して支払われるものに該当するかを判断するに当たっては、名称のみならず、支払い方法、支払いの基準等の実態を見て判断する必要があるものであること。
例えば、通勤手当について、現実に通勤に要する交通費等の費用の有無や金額如何にかかわらず、一律の金額が支払われている場合など、名称は「通勤手当」であるが、実態として基本給などの一部として支払われているものや、家族手当について、名称は「家族手当」であるが、家族の有無にかかわらず、一律に支払われているものについては、職務の内容に密接に関連して支払われるものに該当する可能性があること。
イ.短時間・有期雇用労働者の「職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を勘案し」とは、短時間・有期雇用労働者の働きや貢献に見合った賃金決定がなされるよう、働きや貢献を評価する要素である職務の内容、職務の成果、意欲、能力、経験を勘案要素の例示として挙げているものであること。勘案要素のうち、どの要素によることとするかは各企業の判断に委ねられるものであるが、その勘案については、法第14条第2項による説明を求められることを念頭に、どの要素によることとしたのか、また、その要素をどのように勘案しているのかについて客観的かつ具体的な説明ができるものとされるべきであること。
「職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項」を勘案した措置の例としては、職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項を踏まえた①賃金水準の見直し、②昇給・昇格制度や成績等の考課制度の整備、③職務手当、役職手当、成果手当の支給等が考えられること。例えば、職務の内容を勘案する場合、責任の重さや業務の困難度で賃金等級に差を設けることなどが考えられるが、本条の趣旨は、この措置の結果として短時間・有期雇用労働者の集団の中で賃金の差を生じさせることにあるのではなく、職務の内容、職務の成果等を適切に賃金に反映させることにより、結果として通常の労働者の待遇との均衡を図っていくことにある点に留意すべきであること。
なお、「その他の就業の実態に関する事項」としては、例えば、勤続年数が考えられること。
ウ.「通常の労働者との均衡を考慮しつつ」とは、短時間・有期雇用労働者と職務の内容が同一である通常の労働者だけでなく、職務の内容が異なる通常の労働者との均衡も考慮することを指しているものであること。具体的には、通常の労働者の賃金決定に当たっての勘案要素を踏まえ、例えば職務の内容が同一の通常の労働者の賃金が経験に応じて上昇する決定方法となっているならば、短時間・有期雇用労働者についても経験を考慮して賃金決定を行うこととする等、「職務の内容、職務の成果、意欲、能力又は経験その他の就業の実態に関する事項」に応じた待遇に係る措置等を講ずることになること。
エ.法第10条の措置を講ずる時期については、通常の労働者の定期昇給や賃金表の改定に合わせて実施すること等が考えられるが、例えば、期間の定めのある労働契約を締結している場合においては、当該契約を改定する際又は更新する際に、あわせて賃金の決定方法について均衡を考慮したものとなるよう見直すことも考えられるものであること。
(6)第14条(事業主が講ずる雇用管理の改善等の措置の内容等の説明)
ア.短時間・有期雇用労働者は、通常の労働者に比べ労働時間や職務の内容が多様であり、その労働条件が不明確になりやすいことなどから、通常の労働者の待遇との違いを生じさせている理由がわからず、不満を抱く場合も少なくない状況にある。また、そもそも事業主が短時間・有期雇用労働者についてどのような雇用管理の改善等の措置を講じているのかについて、短時間・有期雇用労働者が認識していない場合も多いと考えられ、こうしたことが、短時間・有期雇用労働者の不安や不満につながっていると考えられる。短時間・有期雇用労働者がその有する能力を十分に発揮するためには、このような状況を改善し、その納得性を高めることが有効である。さらには、短時間・有期雇用労働者が通常の労働者との間の待遇の相違について納得できない場合に、まずは労使間での対話を行い、不合理な待遇差の是正につなげていくとともに、事業主しか持っていない情報のために、労働者が訴えを起こすことができないといったことがないようにすることが重要である。このため、法第6条の文書の交付等による労働条件の明示と併せて、事業主に対し、短時間・有期雇用労働者の雇入れ時に当該事業主が講ずる雇用管理の改善等の措置の内容について説明しなければならないこととするとともに、短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに待遇の決定に当たって考慮した事項について説明しなければならないこととしたものであること。
イ.法第14条第1項は、事業主は、短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときは、速やかに、法第8条から第13条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項(労働基準法第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項及び特定事項を除く。)に関し講ずることとしている措置の内容について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならないことを定めたものであること。
労働基準法第15条第1項に規定する厚生労働省令で定める事項及び法第6条第1項の特定事項については、労働基準法又は法により、別途、文書等の交付等による明示が義務付けられていることから、本項による説明義務の対象とはしていないこと。なお 、本項により事業主に説明義務が課されている事項には、法第10条及び第11条第2項の規定により努力義務が課されているものも当然に含むものであること。
ウ.法第14条第1項による説明については、事業主が短時間・有期雇用労働者を雇い入れたときに、個々の短時間・有期雇用労働者ごとに説明を行うほか、雇入れ時の説明会等において複数の短時間・有期雇用労働者に同時に説明を行う等の方法によっても、差し支えないこと。
また、本項による説明は、短時間・有期雇用労働者が、事業主が講ずる雇用管理の改善等の措置の内容を理解することができるよう、資料を活用し、口頭により行うことが基本であること。ただし、説明すべき事項を全て記載した短時間・有期雇用労働者が容易に理解できる内容の資料を用いる場合には、当該資料を交付する等の方法でも差し支えないこと。
資料を活用し、口頭により行う場合において、活用する資料としては、就業規則、賃金規程、通常の労働者の待遇の内容のみを記載した資料が考えられること。また、事業主が講ずる雇用管理の改善等の措置を短時間・有期雇用労働者が的確に理解することができるようにするという観点から、説明に活用した資料を短時間・有期雇用労働者に交付することが可能な場合には、当該資料を交付することは望ましい措置といえること。
説明すべき事項を全て記載した短時間・有期雇用労働者が容易に理解できる内容の資料を用いる場合において、当該資料には、待遇の内容の説明に関しては、就業規則の条項を記載し、その詳細は、別途就業規則を閲覧させるという方法も考えられること。ただし、事業主は、就業規則を閲覧する者からの質問に、誠実に対応する必要があること。
有期雇用労働者については、労働契約の更新をもって「雇い入れ」ることとなるため、その都度本項による説明が必要となるものであること。
エ.本条第1項の説明内容としては、法に基づき事業主が実施している各種制度等について説明することが考えられること。法第8条については、雇い入れる短時間・有期雇用労働者の待遇について、通常の労働者の待遇との間で不合理な相違を設けていない旨を説明すること。法第9条については、雇い入れる短時間・有期雇用労働者が通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者の要件に該当する場合、通常の労働者との差別的な取扱いをしない旨を説明すること。法第10条については、職務の内容、職務の成果等のうちどの要素を勘案した賃金制度となっているかを説明すること。法第11条については、短時間・有期雇用労働者に対してどのような教育訓練が実施されるかを説明すること。法第12条については、短時間・有期雇用労働者がどのような福利厚生施設を利用できるかを説明すること。法第13条については、どのような通常の労働者への転換推進措置を実施しているかを説明すること。
なお、 本項による説明は、同項による説明義務に係る各条項の規定により求められている措置の範囲内で足りるものであること。このため、法第11条及び第12条に関し、通常の労働者についても実施していない又は利用させていない場合には講ずべき措置がないことから、本項により説明する内容は「ない」旨を説明しなくとも同項に違反するものではないこと。
オ.法第14条第2項は、事業主は、雇い入れた後、その雇用する短時間・有期雇用労働者から求めがあったときは、当該短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違の内容及び理由並びに法第6条から第13条までの規定により措置を講ずべきこととされている事項に関する決定をするに当たって考慮した事項について、当該短時間・有期雇用労働者に説明しなければならないことを定めたものであること。
なお、本項により事業主に説明義務が課されている事項には、法第6条第2項、第7条、第10条及び第11条第2項の規定により努力義務が課されているものも当然に含むものであること。
カ.法第14条第2項の説明内容のうち、待遇の相違の内容及び理由に関する説明をする際に比較の対象となる通常の労働者は、職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲等が、短時間・有期雇用労働者の職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲等に最も近いと事業主が判断する通常の労働者であること(短時間・有期雇用労働指針第3の2(1))。
「職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲等に最も近い」通常の労働者を選定するに当たっては、
・ 「職務の内容」並びに「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同一である通常の労働者
・ 「職務の内容」は同一であるが、「職務の内容及び配置の変更の範囲」は同一でない通常の労働者
・ 「職務の内容」のうち、「業務の内容」又は「責任の程度」が同一である通常の労働者
・ 「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同一である通常の労働者
・ 「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲」のいずれも同一でない通常の労働者
の順に「近い」と判断することを基本とするものであること。その上で、同じ区分に複数の労働者が該当する場合には、事業主が更に絞り込むことが考えられるが、その場合には、
・ 基本給の決定等において重要な要素(職能給であれば能力・経験、成果給であれば成果など)における実態
・ 説明を求めた短時間・有期雇用労働者と同一の事業所に雇用されるかどうか
等の観点から判断することが考えられること。いずれの観点から絞り込むかは事業主の判断であるが、その選択した観点において、短時間・有期雇用労働者と最も近いと考える者を選定するものであること。
また、「通常の労働者」に関しては、例えば、
・ 一人の通常の労働者
・ 複数人の通常の労働者又は雇用管理区分
・ 過去1年以内に雇用していた一人又は複数人の通常の労働者
・ 通常の労働者の標準的なモデル(新入社員、勤続3年目の一般職など)
を比較対象として選定することが考えられること。
また、事業主は、待遇の相違の内容及び理由の説明に当たり、比較対象として選定した通常の労働者及びその選定の理由についても、説明を求めた短時間・有期雇用労働者に説明する必要があること。
なお、個人情報の保護の観点から、事業主は、説明を受けた短時間・有期雇用労働者において、比較対象となった通常の労働者が特定できることにならないように配慮する必要があること。
キ.待遇の相違の内容の説明については、通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間の待遇に関する基準の相違の有無を説明するほか、通常の労働者及び短時間・有期雇用労働者の待遇の個別具体的な内容又は待遇に関する基準を説明すること(短時間・有期雇用労働指針第3の2(2))。
短時間・有期雇用労働指針URL:https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/part-law-shishin_1.pdf
【参考】
短時間・有期雇用労働指針(「事業主が講ずべき短時間労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針」以下同じ。)第3の2(2) 待遇の相違の内容 事業主は、待遇の相違の内容として、次のイ及びロに掲げる事項を説明するものとする。 イ 通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間の待遇に関する基準の相違の有無 ロ 次の(イ)又は(ロ)に掲げる事項 (イ) 通常の労働者及び短時間・有期雇用労働者の待遇の個別具体的な内容 (ロ) 通常の労働者及び短時間・有期雇用労働者の待遇に関する基準」 |
「待遇の個別具体的な内容」は、比較の対象となる通常の労働者の選び方に応じ、
・ 比較対象として選定した通常の労働者が一人である場合には、例えば、賃金であれば、その金額
・ 比較対象として選定した通常の労働者が複数人である場合には、例えば、賃金などの数量的な待遇については平均額又は上限・下限、教育訓練などの数量的でない待遇については標準的な内容又は最も高い水準・最も低い水準の内容
を説明すること。
「待遇に関する基準」を説明する場合、例えば賃金であれば、賃金規程や等級表等の支給基準の説明をすること。ただし、説明を求めた短時間・有期雇用労働者が、比較の対象となる通常の労働者の待遇の水準を把握できるものである必要があること。すなわち、「賃金は、各人の能力、経験等を考慮して総合的に決定する」等の説明では十分ではないこと。 待遇の相違の理由の説明については通常の労働者及び短時間労働者の職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、待遇の性質及び待遇を行う目的に照らして適切と認められるものに基づき説明する必要があること(短時間・有期雇用労働指針第3の2(3))。
【参考】
第3の2(3) 待遇の相違の理由 事業主は、通常の労働者及び短時間・有期雇用労働者の職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、待遇の性質及び待遇を行う目的に照らして適切と認められるものに基づき、待遇の相違の理由を説明するものとする。」 |
具体的には、
・ 通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間で待遇に関する基準が同一である場合には、同一の基準のもとで違いが生じている理由(成果、能力、経験の違いなど)
・ 通常の労働者と短時間・有期雇用労働者との間で待遇に関する基準が異なる場合には、待遇の性質・目的を踏まえ、待遇に関する基準に違いを設けている理由(職務の内容、職務の内容及び配置の変更の範囲の違い、労使交渉の経緯など)、及びそれぞれの基準を通常の労働者及び短時間・有期雇用労働者にどのように適用しているか
を説明すること。
また、待遇の相違の理由として複数の要因がある場合には、それぞれの要因について説明する必要があること。
ク.法第14条第2項の説明内容のうち、通常の労働者との待遇の相違の内容及び理由以外の事項に関しては、法各条の観点から、事業主が実施している各種制度等がなぜそのような制度であるのか、又は事業主が実施している各種制度等について説明を求めた短時間・有期雇用労働者にどのような理由で適用され若しくは適用されていないかを説明すること。法第10条については、職務の内容、職務の成果等のうちどの要素を勘案しているか、なぜその要素を勘案しているか、また、当該説明を求めた短時間・有期雇用労働者について当該要素をどのように勘案しているかを説明すること。
なお、本項による説明は、同項による説明義務に係る各条項の規定により求められている措置の範囲内で足りるものであるが、法第11条及び第12条に関し、通常の労働者についても実施していない又は利用させていない場合には、講ずべき措置がないためであることを説明する必要があること。
ケ.法第14条第2項に基づく説明は、短時間・有期雇用労働者がその内容を理解することができるよう、資料を活用し、口頭により行うことが基本であること。ただし、説明すべき事項を全て記載した短時間・有期雇用労働者が容易に理解できる内容の資料を用いる場合には、当該資料を交付する等の方法でも差し支えないこと(短時間・有期雇用労働指針第3の2(4))。
【参考】
第3の2(4) 説明の方法 事業主は、短時間・有期雇用労働者がその内容を理解することができるよう、資料を活用し、口頭により説明することを基本とするものとする。ただし、説明すべき事項を全て記載した短時間・有期雇用労働者が容易に理解できる内容の資料を用いる場合には、当該資料を交付する等の方法でも差し支えない。 |
資料を活用し、口頭により行う場合において、活用する資料としては、就業規則、賃金規程、通常の労働者の待遇の内容のみを記載した資料が考えられること。なお、説明の際に、活用した資料を併せて交付することは、事業主が講ずる雇用管理の改善等の措置を短時間・有期雇用労働者が的確に理解することができるようにするという観点から、望ましい措置といえること。
説明すべき事項を全て記載した短時間・有期雇用労働者が容易に理解できる内容の資料を用いる場合において、当該資料には、待遇の相違の内容の説明に関しては、就業規則の条項を記載し、その詳細は、別途就業規則を閲覧させるという方法も考えられること。ただし、事業主は、就業規則を閲覧する者からの質問に、誠実に対応する必要があること。
コ.本条の規定による説明により短時間・有期雇用労働者が納得することについては、本条の義務の履行とは関係がないものであること。
サ.法第14条第3項は、事業主は、短時間・有期雇用労働者が同条第2項の求めをしたことを理由として、当該短時間・有期雇用労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならないことを定めたものであること。
さらに、法第16条に基づく相談のための体制の整備を適切に実施すること等により、短時間・有期雇用労働者が不利益な取扱いを受けることへの危惧を持つことなく説明を求めることができるような職場環境としていくことが望まれること。
なお、説明を求めた短時間・有期雇用労働者に対して事業主が法第14条第2項により求められる範囲の説明を行ったにもかかわらず、繰り返し説明を求めてくるような場合に、職務に戻るよう命じ、それに従わない場合に当該不就労部分について就業規則に従い賃金カットを行うようなこと等まで、不利益な取扱いとして禁止する趣旨ではないこと。
シ.「理由として」とは、短時間・有期雇用労働者が待遇の相違の内容及び理由並びに法第6条から第13条までの措置に関する決定をするに当たって考慮した事項の説明を求めたことについて、事業主が当該短時間・有期雇用労働者に対して不利益な取扱いを行うことと因果関係があることをいうものであること。
「不利益な取扱い」とは、解雇、配置転換、降格、減給、昇給停止、出勤停止、労働契約の更新拒否等がこれに当たるものであること。なお、配置転換等が不利益な取扱いに該当するかについては、給与その他の労働条件、職務内容、職制上の地位、通勤事情、当人の将来に及ぼす影響等諸般の事情について、旧勤務と新勤務とを総合的に比較考慮の上、判断すべきものであること。
Ⅱ.法施行に向けた対応例
短時間・有期雇用労働法は、法の目的にもある通り
『短時間・有期雇用労働者について、その適正な労働条件の確保、雇用管理の改善、通常の労働者への転換の推進、職業能力の開発及び向上等に関する措置等を講ずることにより、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を図ること』とされています。
つまり、短時間・有期雇用労働者を雇用することにより適用される法律です。
短時間・有期雇用労働者を雇用する理由は様々ですが、今後は1~3年程度の雇用期間中に必要な教育と役割を与えたうえで、その能力を見極め、継続雇用したい人材は早々に無期雇用に転換し、継続雇用が困難な者は更新を行わないことも検討する必要があります。
一方、定年60歳による65歳までの再雇用は、定年を65歳以上に延長して無期雇用化を検討し、併せて一定の年齢以降(例えば55歳から60歳までの間に)は短時間、職務限定などの限定社員化を図る検討も必要です。
その際には、若手・中堅社員の職務内容を精査し、職務再設計により若手・中堅社員の業務軽減とシニア社員(中高齢者)に対して当該業務での役割拡大を図るとともに、シニア社員にも役割発揮による評価を行い、評価結果に対するインセンティブを与える必要があります。
また、短時間・有期雇用労働者、またシニア社員は40代後半の早い段階からライフプラン・キャリアデザイン研修を行い、変化に柔軟で、自ら成長し続ける人を育て、支援していくことが求められます。
これらの対応のために賃金制度や評価制度の改訂が必要になる場合がありますが、大幅な改訂ではなく、段階的に運用状況を見極めながら、特に従業員の声を聴き、従業員と協議しながら進めていくことが重要です。
なお、賃金制度の改訂にあたり、賃金体系、水準、水準の相違理由等は事業主及び労使の裁量になりますが、以下には留意する必要があります。
① 均衡待遇において、基本給などよりは手当の不合理性の方が厳格に判断されやすいため、手当の廃止を含めた整理を検討する。
② 上記により無期雇用労働者(正社員)の待遇が引き下げられることも予想されますが、その場合は就業規則の不利益変更にあたりますので、代替措置または経過措置について労使が協議し、双方が納得したものにする。
③ 賃金体系、水準の相違は職務内容等で説明がつく範囲にする。
評価制度にはいろいろな考え方や体系がありますが、自社の現状の中でどのように構築していくか、専門家のアドバイスや自社の専任者による構築が考えられますが、一般従業員向けの評価制度のいくつかのポイントをあげます。
①複雑な評価制度を最初から導入しない。
②評価制度は評価する側が運用しやすく、職制・職務ごとの従業員に対する指導・育成方針に準拠したものであり、評価される側が評価内容を理解し、納得ができるものにする。
③評価する側は、会社の発展と従業員の成長のために期待の表明とその後のフォロー及び結果のフィードバックを行う。
④評価は、従業員にインセンティブを与えるものであり、モチベーションアップを図るものであり、またその後の指導に生かすための指針となるものである。
Ⅲ.まとめ
改正短時間・有期雇用労働法の主要な改正点を見てきましたが、派遣労働者の労使協定方式による市場賃金の導入と併せて、短時間・有期雇用労働者と派遣労働者のいわゆる非正規労働者の処遇改善が、比較対象労働者との間の待遇の相違の内容及び理由その他についての説明義務とともに実施されます。
人口減少による労働力不足の中、働く意欲の高いシニア層や短時間勤務を希望する人、そして非正規から正規への転換を希望する人など多様な人たちが、働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)に就き、かつ同一労働同一賃金が実現できる社会への変革が求められています。
以上